少年期の壱 - 三 | 緋の幻影

少年期の壱 - 三

 6年生の一年間はどう過ごしたのかほとんど覚えが無い、日光に修学旅行に行ったはずだが何も
 想い出さない、相変わらず父が家にいなかった事はかすかに覚えている。
 ああーそうだ、夏休みに短期家出したんだ、タンスにあった有り金(10万円くらいか?)を持って
 電車に乗ったがどこをどう行ったのか定かでない、たしか親戚の家に二泊して戻された。
 お金はほとんど使ってなかった、というよりもどう使うか解らなかったというのが事実だろう。

 「おい、ビール飲んでみろ、今日から中学生だ、昔でいえば元服だ遠慮することはねえ」
 「いいよ!」
 「やかましい!物事はけじめだ、一杯やれ、形だけでもいいんだ」
 中学校の入学式(もちろん一人きり)からもどった夕方の出来事。
 この日から私がななめに或いはジクザクに日を重ねてゆく記念(?)の第一歩だった。


 風の音に秋の気配を感じる頃、下半身に春(或いは強烈な太陽が輝く夏か?!)が訪れた。
 しかも突然脳を直撃し、その快感と不思議な感覚にどう対処してよいかわからずただ驚くばかり
 であった。

 夜中にフト眼を覚ますと右手がペニスをにぎりしめていた、こりゃなんだ!と思うほどかたく
 膨らんでいてあわててトイレに駆け込んだとたん、白い液体がどくどくと噴出し私は眼を丸くして
 我が息子をしげしげと見つめていたが、まるで別の生き物のようにピクピクと上下に痙攣していた。
 と同時に今だかつて味わった事の無い気持ちよさに呆然としていた。

 「病気だ!」

 おもわず声がでてしまい、パンツもろくにあげず布団に駆け込んだ。
 さあー それから眠れない、なんだ、なんだ、なんなんだー
 今、想いだすと実に幼稚な事だがその時は死ぬかと思うほどの衝撃であった。

 眠れぬ一夜があけ学校に行ったが、同級生皆に知られているような錯覚に陥り視線が妙に気にかか
 った。特に女子の目付きがいつもと違うように感じた、中学校2年生、心と身体がばらばらな
 アンファンテリブル!!


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