少年期の弐 - 五
茜色に沈んでゆく太陽が天高く流れている鰯雲の残滓を捉えた時、秋はすでに深い色に
染まっていた。
風の便りで離婚した母親が死んだのを知った。
年齢、誕生日、旧姓、実家などほとんどわからず、顔さえもろくに覚えていない、
たしかに中学校の1年生くらいまで一緒に暮らしていた期間があったはずだが?
かなしい人だ。
母親はどんな一生を過ごしたのだろう、幸せという言葉に縁があったのか、
それとも・・・。
その日からしばらく遊ぶ気も無くただぼんやりと自分の部屋でゴロゴロしていたが、
自分自身に問いかけていた疑問があった。
「心がよじれて、どこかに穴が開いているのではないか?」
親が死んでも特に悲しくもないし、嘆く事もない心の空虚さに寒々として鳥肌が立った。
唯一、救われた事は小学校(榴ヶ岡小学校)の入学式で手をつないだ私を見た母の
笑顔がすばらしく優しかった、この一瞬だけがいまだに胸に残っている。
かすかな想い出でもいい、消えずにいてほしい。
やわらかく風が立った。 「お母さん、ありがとう」
染まっていた。
風の便りで離婚した母親が死んだのを知った。
年齢、誕生日、旧姓、実家などほとんどわからず、顔さえもろくに覚えていない、
たしかに中学校の1年生くらいまで一緒に暮らしていた期間があったはずだが?
かなしい人だ。
母親はどんな一生を過ごしたのだろう、幸せという言葉に縁があったのか、
それとも・・・。
その日からしばらく遊ぶ気も無くただぼんやりと自分の部屋でゴロゴロしていたが、
自分自身に問いかけていた疑問があった。
「心がよじれて、どこかに穴が開いているのではないか?」
親が死んでも特に悲しくもないし、嘆く事もない心の空虚さに寒々として鳥肌が立った。
唯一、救われた事は小学校(榴ヶ岡小学校)の入学式で手をつないだ私を見た母の
笑顔がすばらしく優しかった、この一瞬だけがいまだに胸に残っている。
かすかな想い出でもいい、消えずにいてほしい。
やわらかく風が立った。 「お母さん、ありがとう」