少年期の弐 - 六 | 緋の幻影

少年期の弐 - 六

振って沸いたような災難がやってきた、トラブルだ!アクシデントだ!とさわいでも
後の祭り、これはかなりヤバイ。
事の発端は行きつけのグランドバーの女の子とラブホテル(当時は連れ込み旅館といった)
に泊まり、すったもんだのすえに晴れて童貞をささげまつった其の時から、当然のごとく
降りかかってくる運命だった。
エミちゃん(20歳位?)とのお付き合いは数度に及び、昼間も食事だ喫茶店だと遊び
回っていたが、ある日、エミちゃんが男性と一緒に現れた。バリッとした服装、高そうな
時計やネクタイ、其の割には全体の色調がしぶく、どことなく威圧感を覚えた。
「エミと付き合ってるんだってなー」
さりげなくテーブルの上におかれた左手に眼をやるときんきらきんと光輝く指輪のとなりの
指が妙にバランスが悪い、第1関節から先が無かった。
「え?」
 「え、じゃねえんだよ、俺もなめられたもんだ、こんなガキにスケを寝取られるとはなー」
 「ねえ、許してやって、私からさそったんだからさー」
 「うるせえ! お前はだまってろ、俺も**組の幹部だメンツが 立たねえんだよ、えー」
テーブルの下で膝がカタカタと踊った。
 「名前は?」
本能的に本名は言ってはいけないと思った、右翼の親父と極道だ、おおごとになりそうな
気がしたのである。
 「ヨシユキです」
 「苗字は?」
とっさに佐藤という苗字が浮かんだ。
 「佐藤です!」
「オイ、こいつの名前本当か」
 「苗字は知らないわ、いつもヨッちゃんと呼んでいたから」
 「どこに住んでるんだ?」
「鉄砲町」
おもわず本当のことを言ってしまった。
 「おまえ、未成年だからな、親父と話をつける案内しろ!」
 「いいえ、これは僕の問題です、父は関係ありません」
 「なまいきなことを言うんじゃねえ、ケツの青いガキがどうおとしまえをつけるって言うんだ、えー」
 「どうすればいいんですか?」
 「事務所に来い!!」
 「パパ、やめてお願いだから」
 「やかましい、お前は引っ込んでいろ」
というあんばいで**組の事務所につれていかれた。
私は震えながらも覚悟を決めた、なるようになれ!!


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