青年期の壱 - 三 | 緋の幻影

青年期の壱 - 三

春の到来とともにリハビリの成果が出始め、整形の秋葉先生と病院の中庭でバドミントンをした
(勿論、動きはぎこちないが)

歩けるようになったのである!!

苦しさ、辛さは嘘のように消えていた。
秋葉先生は奇跡に近いと言っていたが、若さというエネルギーははかりしれないものがあった
のかもしれない。
退院が目前に迫った頃、親父が絶頂期からたたき落ちた、商法が改正され、あやしげな新聞を
むりやり企業に購読させ、なにがしかの金を毎月若い衆に集金させていたのができなくなった
のである。我家から徐々に金の匂いが消えていった。
杜の都の桜が満開を迎えた頃、退院した。

「おい、この家、今年いっぱいでなくなるからな」
「え?」
「保証人になった奴が逃げてよ、担保に入っていたんだ」
「引っ越すの?」
「ああ、まだ先だけどな、俺も落ちたもんだ」

急に老け込んだような親父のだみ声にあらためて現実を感じとった。
私はリハビリ中だったので家の中でゴロゴロしたり、裏庭で身体を動かしたりしていたが、妙な
不安が頭から離れなかった。
生まれて初めて働いてみようと思ったが、手術の傷跡が痛んだために実際に就職(アルバイト)
したのは7月のはじめ頃で、建設会社といっても重機専門の中小企業だった。
そこで2人の女性と知り合う事になる。ひとりは事務を担当している一つ年上のスレンダーな
美人で10年位くされ縁が続き、もうひとりは一つ年下の平凡な田舎娘だったが、たまたまこの
会社に面接に来て(某電気メーカーのクレジット部に就職してしまったが)上司が留守
だったので15分ほど話していたが、妙に引かれるところがあり連絡先(友人の女の子と二人で
同居しているアパート)を教えてもらった。
その田舎娘(C子)と1年後結婚する事になるとは夢にも思わなかった。

其の前に親父の金をくすねorセンチメンタルorゴージャスor酒と女のセットor最後はどん底の
30日間京都周遊旅行の旅で二十歳の幕開けと行きましょう!



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